2024.08.17
人手不足を解消する5つの対策:中小企業でも実践可能な方法と事例
中小企業にとって、人手不足は深刻な問題です。人手不足の原因や、どのように解消すればよいのか、具体的な対策が知りたい。そう思う方もいるかもしれません。
実は、中小企業でも実践可能な方法で、人手不足を解消することができます。具体的な対策を講じることで、労働力を確保し、業績を向上させることが可能です。
この記事では、人手不足を解消するための5つの対策と、実際に中小企業で成功した事例を紹介します。
人手不足の原因とその背景を理解する
人手不足は、日本社会が抱える大きな課題の一つです。この問題の背景には、いくつかの要因が絡み合っています。まず第一に挙げられるのは、少子高齢化の進行です。日本の人口構造が急速に変化し、高齢者が増える一方で、若年層の労働人口が減少しています。これにより、多くの企業が必要な労働力を確保することが困難になっています。
また、働き方改革も人手不足の一因となっています。政府主導で進められている働き方改革は、労働時間の短縮や残業規制の強化など、従業員の働き方を見直す動きを加速させました。しかし、これにより一部の企業では、従来の業務を維持するために必要な労働時間を確保できなくなり、結果として人手不足が生じています。
さらに、業界ごとの特性も無視できません。例えば、建設業や介護業界などは、特に人手不足が深刻であり、これらの業界では厳しい労働環境や低賃金が原因で若年層が集まりにくい状況が続いています。
人手不足の主な原因とは?
人手不足の主な原因は、少子高齢化、働き方改革、そして業界ごとの特性です。少子高齢化によって、労働人口が減少していることはよく知られていますが、働き方改革による影響も見逃せません。これにより、従業員一人ひとりの労働時間が制限され、結果として業務をカバーするための追加人員が必要となるケースが増えています。
少子高齢化による労働力の減少
【出典】総務省「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
少子高齢化は、日本社会全体に広がる問題であり、労働力の減少に直結しています。若年層が減少する一方で、高齢者が増加しているため、企業は将来的な労働力確保に対して危機感を持っています。この現象は、特に地方の中小企業において顕著であり、地域の経済にも大きな影響を及ぼしています。
働き方改革とその影響
働き方改革は、労働環境の改善を目的とした政策ですが、一部の企業にとっては新たな課題を生み出しています。例えば、労働時間の短縮が進む中で、業務の効率化が求められる一方、従業員の労働時間が減少するため、必要な人員を確保することが困難になる場合があります。このような状況では、企業は人手不足を補うための新たな施策を講じる必要があります。
若者の働き方に対する意識の変化
若者たちの仕事に対する価値観の変化が、深刻な人手不足を引き起こしています。特に20代の若者たちは、単なる「働きやすさ」ではなく、「成長できる環境」を求めるようになっています。これにより、安定した職場環境に加えて、スキルや知識を高める機会が提供されることが、彼らにとって重要な要素となっているのです。
また、転職や独立、さらには起業への意欲も高まっており、常に新しい挑戦を視野に入れている彼らにとって、企業はより魅力的な環境を提供し続ける必要があります。
さらに、若者たちのメンタルヘルス問題も見逃せません。増加する精神的な負担は、仕事のパフォーマンス低下や早期離職のリスクを高めており、企業にとっては彼らのメンタルヘルスを支援することが急務です。今こそ、企業は若者のニーズに応え、魅力的な環境を整えるために行動を起こすべきです。
どの業界で特に深刻なのか?
人手不足は、全体的に広がる問題ですが、特に深刻な業界としては、建設業、医療福祉業界、飲食や旅館・ホテル業などが挙げられます。これらの業界は、労働環境が厳しいことや、賃金が他の業界と比較して低いことから、若年層が集まりにくいという課題を抱えています。
建設業
建設業界では、高度成長期に整備されたインフラが今後一斉に老朽化すると予測されており、2030年頃までには建設後50年以上が経過する施設の割合が急増すると見込まれています。これにより、インフラの維持・更新に必要な労働力の需要が大幅に増加することが予想されます。
運輸業・郵便業
宅配便の取扱数は急速に増加している一方で、ドライバーは減少し、高齢化が進んでいます。2030年にはドライバーの需要ギャップが約8.6万人に達すると予測されています。この状況は、物流業界全体にとって深刻な課題です。
さらに、2024年問題と呼ばれる働き方改革関連法の影響も大きな懸念材料です。この法改正により、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されるため、人手不足がさらに深刻化し、ドライバーの収入低下や物流の停滞といった問題が予想されます。
特に運輸業や郵便業では、時間外労働規制によりドライバー不足が一層顕著になるため、企業は早急に対策を講じる必要があります。
医療・福祉
医療・福祉分野、とりわけ介護分野において、人手不足が深刻な状況です。2025年には団塊の世代が75歳を迎え、介護サービスの需要は2017年と比べて在宅介護で24%、居住系サービスで34%、介護施設で22%増加すると予想されています。この増加する需要に対して、賃金水準の低さや雇用管理の不備などが原因で、人材不足が続いています。2025年には、介護分野で約55万人の人材が不足すると見込まれています。
旅館・ホテル
旅館やホテル業は、24時間体制で営業しているため、従業員の負担が非常に大きい業種の一つです。シフト制が導入されているものの、長時間労働や不規則な勤務が続きやすく、これが離職率の高さにつながっています。
また、コロナ禍が収束に向かい、国内外からの旅行需要が急増していることも、旅館やホテルの人手不足を一層深刻にしています。インバウンド需要の回復により、宿泊業界全体での人材確保が急務となっています。
このような状況に対処するためには、労働環境の改善や効率的なシフト管理、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などが求められています。
情報サービス
情報サービス業界では、DX推進が進む中で「システム関連需要」が急速に増加しています。しかし、独立行政法人情報処理推進機構の調査によると、9割以上の企業がDXを担うIT人材の量と質が不足していると感じています。
従来のIT人材では、ITツールの運用・保守や請負開発は可能ですが、最先端技術を扱うことが求められるDXには対応しきれていません。このため、情報通信サービス業において、こうしたIT人材の不足がボトルネックとなっています。
DXを成功させるためには、最先端技術を扱えるIT人材を確保することが不可欠です。具体的には、採用強化、社員の定着率向上、外部人材の活用、そして継続的な人材育成が重要な対策として挙げられます。
中小企業が直面する人手不足の現状
中小企業は、大企業に比べて資金力やブランド力が弱いため、人手不足の影響を強く受けやすいです。特に地方の中小企業では、地域の人口減少や若年層の都市部への流出が深刻な問題となっており、必要な人材を確保することが困難です。また、中小企業は求人広告に多額の費用をかけることが難しく、結果として採用活動が思うように進まないことが多いです。
日本の中小企業における現状
日本の中小企業は、全国の企業数の約99%を占めていますが、その多くが人手不足に悩まされています。特に、地方の中小企業では、地域の労働人口が減少しているため、採用が困難です。これに加え、都市部への人口流出が進んでいるため、地方に残る労働力の確保が一層難しくなっています。
地域別の人手不足状況
地域によって人手不足の深刻さは異なりますが、特に地方の中小企業では、人口減少が顕著であり、労働力の確保が難しい状況が続いています。例えば、東北や四国などの地方では、若年層が都市部に移住する傾向が強く、地元に残る人材が少なくなっています。これにより、地域の経済活動にも影響が出ており、企業の存続が危ぶまれるケースも増えています。
人手不足がもたらす影響と課題
人手不足が続くと、企業は業務の効率化が求められる一方で、サービスや製品の品質を維持することが難しくなります。特に中小企業では、限られた人員で多くの業務をこなさなければならないため、従業員の負担が増加し、離職率が高まるリスクがあります。また、人手不足によって業績が低迷し、企業の成長が停滞する可能性も高まります。
効果的な人手不足解消対策とは?人手不足を解消する5つの対策
人手不足を解消するためには、効果的な対策を講じることが不可欠です。特に中小企業にとっては、限られたリソースの中で最大限の効果を発揮する方法を見つけることが重要です。この章では、社内の効率化や外部リソースの活用や自社でできる対策など、具体的な方法について詳しく解説します。
社内の効率化を図る
社内の効率化は、人手不足解消のための基本的な対策です。業務の効率化を進めることで、少ない人員でも必要な業務をカバーできるようになります。これには、ITツールの導入や業務プロセスの見直しが含まれます。
ITツールの導入による業務効率化
ITツールの導入は、業務の効率化に大きく寄与します。例えば、タスク管理ツールやプロジェクト管理ソフトを使用することで、業務の進捗管理が容易になり、無駄な作業を削減することができます。また、チャットツールやオンライン会議システムを活用することで、コミュニケーションの効率化を図り、リモートワークにも対応しやすくなります。さらに、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した自動化ツールを導入することで、繰り返しの業務を自動化し、人手のかかる業務を軽減することが可能です。
外部リソースを活用する
外部リソースの活用は、社内でカバーできない部分を補完するための有効な手段です。これには、人材派遣サービスやフリーランスの活用が含まれます。
人材派遣サービスの活用方法
人材派遣サービスを利用することで、短期間で必要なスキルを持った人材を確保することができます。これにより、急な業務量の増加や特定のプロジェクトに対応するための人材を効率的に確保することができます。派遣社員を活用することで、正社員に比べて柔軟に人員を調整できるため、業務の波に対応しやすくなります。また、派遣社員が正社員として採用されるケースもあり、企業にとっては将来的な人材確保の手段にもなります。
労働環境の改善や人事制度の再構築を進める
働き方改革と人事制度の見直しは、生産性の向上だけでなく、人材の採用や定着にも効果をもたらします。特に、女性やシニア層が働きやすい環境を整備することが重要です。これにより、多様な人材の活用が促進され、企業全体のパフォーマンスが向上することが期待されます。
中小企業庁の調査によると、1995年以降、生産年齢人口が減少し続けている一方で、労働力人口の減少は緩やかです。これは、65歳以上のシニア層や女性の労働参加率が上昇していることが背景にあります。この傾向を活かし、企業はこれらの層に適した柔軟な働き方や支援制度を導入することが求められています。
労働力人口と生産年齢人口の推移
【出典】中小企業庁「中小企業白書 2018」
女性は出産などのライフイベントによって離職を余儀なくされることが多く、シニアは体力的な理由で短時間の雇用を希望しても、それを受け入れる仕事が見つかりにくい状況です。このように、働きたくても働けない人が多く存在します。
そのため、フルタイムに限らない多様な働き方(産休・育休、時短勤務、復職制度、テレワーク制度など)を取り入れたり、長時間労働の改善を行うことで、女性やシニア、さらには外国人の雇用を促進することができます。これにより、優秀な人材を確保する可能性が高まります。
しかし、こうした新たな人材を受け入れるには、社内体制の整備が不可欠です。急な体制変更は現場に混乱を招く可能性があるため、目標とする体制を段階的に整えつつ、受け入れ可能な人材の幅を広げていくことが重要です。
若手社員の早期退職を防止する
若手社員の短期間での離職は、人手不足をさらに深刻化させる大きな問題です。離職の背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 社会全体での人手不足に伴う転職のしやすさ
- 企業に依存しないキャリア形成を重視する意識の高まり
- 仕事内容のミスマッチや職場の人間関係の問題
- 労働条件に対する不満や昇進・キャリアパスの不透明さ
この問題を解決するためには、経営方針への理解を深め、コミュニケーションを活性化させることが重要です。また、フィードバックや適切な評価を通じて目標意識を醸成し、キャリアデザインをサポートすることも効果的です。
さらに、若手社員が企業内でキャリアを築きやすい環境を整え、仕事の意義や楽しさを感じられる職場文化を構築することが、離職率の低下につながります。また、社内ネットワーキングを促進するために、部署を超えたプロジェクトや社内イベントの開催、コミュニケーションツールの活用が有効です。
企業は、若手社員の多様な価値観やキャリア観に対応する施策を講じることが求められます。
若手人材の採用活動を強化する
優秀な若手人材の採用は、人手不足を解消するための鍵となる重要な施策です。
そのためには、まず「企業が求める人材像」を明確にすることが不可欠です。採用活動においては、企業がどのような人材を求めているのか、また企業の魅力を具体的に伝えることが求められます。これにより、求職者が自社で働く姿を具体的にイメージしやすくなります。
特に若者にとって、「仕事のやりがい」や「自己成長の機会」は重要な判断基準となるため、これらのポイントを強調することが効果的です。また、選考プロセスでは応募者に対してフラットな態度で接し、企業文化や働き方についてのリアルな情報を提供することも大切です。
効果的な採用マーケティングの手法
採用マーケティングは、人手不足を解消するための重要な手法です。特に中小企業においては、限られたリソースの中で最大限の効果を発揮するために、ターゲットとなる人材に直接アプローチすることが求められます。
自社採用サイトの重要性
自社採用サイトは、企業の魅力を直接的に伝える重要なツールです。求職者は、企業の公式サイトを通じてその企業の雰囲気や価値観を感じ取り、応募を検討します。そのため、自社の強みや働く環境をわかりやすく伝えるための採用サイトを構築することが重要です。また、SEO対策を施し、検索エンジンでの上位表示を目指すことで、より多くの求職者にアプローチすることが可能です。
社員インタビュー動画の活用
社員インタビュー動画は、企業の魅力を伝えるための有力なコンテンツです。実際に働く社員の声を通じて、企業の雰囲気や働きがいを伝えることができ、求職者にとって非常に参考になります。特に若年層の求職者は、視覚的な情報に敏感であり、文字情報だけでは伝わりにくい企業の雰囲気や働く環境を、動画を通じてより具体的に感じ取ることができます。さらに、インタビュー動画をSNSやYouTubeなどのプラットフォームでシェアすることで、企業の認知度を高める効果も期待できます。これにより、企業の魅力を広く伝え、より多くの求職者を惹きつけることが可能になります。
オンラインプラットフォームの活用
オンラインプラットフォームを活用することは、採用活動を効率化する上で非常に重要です。求人サイトやSNSを利用して、広範な層にリーチできるだけでなく、求職者とのコミュニケーションも迅速に行えます。特にLinkedInやIndeedなどのプラットフォームは、特定の業界や職種に焦点を当てたリクルーティング活動に適しており、ターゲットとなる人材に効果的にアプローチすることが可能です。さらに、これらのプラットフォームでは、データ分析機能を活用して応募者の動向を把握し、採用活動の改善に役立てることもできます。
リファラル採用の推進
リファラル採用は、現職の社員が自分のネットワークから適任者を紹介する採用方法です。社員の推薦による採用は、企業文化にマッチする人材を確保しやすく、また、推薦者の責任感が働くため、ミスマッチのリスクが低減されるというメリットがあります。
リファラル採用を成功させるためには、社員に対してインセンティブを提供することが効果的です。例えば、成功報酬としてボーナスを支給したり、推薦者としての功績を社内で表彰することで、社員のモチベーションを高めることができます。また、リファラルプログラムを社内で広く認知させるためのコミュニケーションも重要で、リファラル採用の利点や成功事例を共有することで、社員が積極的に参加するよう促すことができます。
自身の経営者としての成功体験談
私が経営者として取り組んだ人手不足解消策の中で、特に効果的だったのが自社採用サイトのリニューアルとリファラル採用の推進です。
まず、自社の採用サイトを全面的にリニューアルしました。以前は、会社の情報が散在していて、求職者に対して伝えたいメッセージが明確に伝わらない状態でした。そこで、サイトのデザインを一新し、企業文化や社員インタビュー、福利厚生の充実度などをわかりやすく伝えるページを設けました。また、SEO対策を施し、特定のキーワードで検索エンジンの上位に表示されるようにしました。この結果、サイト経由での応募数が大幅に増加し、優秀な人材を効率的に集めることができるようになりました。
さらに、リファラル採用の制度も導入しました。社員一人ひとりに、自分の知人や友人を紹介してもらう仕組みを作り、成功報酬としてボーナスを支給するようにしました。この制度は、社員のモチベーションを高めるだけでなく、企業文化にマッチした人材を集める効果がありました。リファラル採用を通じて入社した社員は、会社に対する理解が深く、離職率も低いという成果が得られています。
これらの取り組みにより、人手不足の解消に成功し、今ではより多くの優秀な人材が我が社の一員として活躍しています。採用サイトとリファラル採用は、これからも積極的に活用していくべきだと考えています。
まとめ
人手不足は日本の中小企業にとって深刻な課題ですが、効果的な対策を講じることで解消可能です。少子高齢化や働き方改革が影響する中、社内の効率化や外部リソースの活用が求められます。また、リファラル採用や自社採用サイト等の活用により、企業文化に合った人材の確保が可能です。成功事例から学び、業界ごとの戦略を駆使することで、持続的な成長を目指しましょう。
著者情報
田中 稔也
Kuroko Works 株式会社 経営コンサルタント保有資格:ウェブ解析士
福岡県大牟田市出身。
2010年、管理栄養士という資格から健康食に特化した配食事業を立ち上げ、みのりや柳川店・大牟田店の2拠点を運営。その後、「株式会社メディカルフーズみのりや」として法人化する。
集客やマーケティング、資金調達、求人戦略、人材育成など、多様な角度から組織運営を鑑み、事業への最適化を実施してきた結果、3期目で年商1億円越えを達成。
経営者同士のつながりの中で、中小企業経営者の悩みを多く聞く機会があり、自身の経験をもとに解決していけるコンサルティングを提供したいと考えるようになる。
2023年、株式会社メディカルフーズみのりやをM&Aにて事業譲渡し、Kuroko Works株式会社を設立。
福岡県(福岡・久留米)、佐賀県、熊本県をメインにコンサルティングサービスを提供、現在に至る。
お問い合わせ
採用に関するお悩み、経営に関するご相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
092-600-0609
電話受付 9:00〜17:00
(日・祝日、お盆・年末年始除く)