2024.09.05
建設業の人手不足を解消する5つの解決策|求人対策と2025年問題への対応法
建設業の現場で人手が足りず、仕事が回らない…。求人を出してもなかなか応募が集まらないし、このままではプロジェクトの遅延や業績の低下が心配だ。と思っている経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか?実は、建設業における人手不足の問題を解消するためには、求人対策や効果的な採用方法だけでなく、2025年問題を見据えた長期的な施策が必要です。この記事では、具体的な解決策として、求人対策や採用方法、2025年問題に対する対応法など、建設業の人手不足を乗り越えるための5つの解決策を紹介します。
目次
建設業の人手不足が深刻化する原因とは?
建設業界では、ここ数年人手不足が非常に大きな課題となっています。多くの企業が労働力の確保に苦戦しており、結果としてプロジェクトの遅延やコスト増加といった問題が発生しています。特に中小企業では、この人手不足が業績に深刻な影響を及ぼしていることが少なくありません。実際、求人を出しても応募が少なく、採用に至るまでのコストも増大しています。
建設業における人手不足の現状
現在、建設業界全体での人手不足は深刻化しています。国土交通省の調査によると、特に現場作業員や技術者の不足が問題視されています。新しい建設プロジェクトが増える一方で、これを支える人材が不足しているため、現場での負担が増え続けているのが現状です。このままでは、建設業界全体が持続可能な成長を遂げることが難しくなってしまいます。
人手不足がもたらすプロジェクト遅延とコスト増加
人手不足は、プロジェクトの進行にも直接的な影響を与えます。作業員が足りないためにプロジェクトの進行が遅れ、納期に遅れることが多発しています。納期の遅れは、クライアントからの信頼を失うだけでなく、追加のコストが発生する原因にもなります。例えば、遅延に伴うペナルティや、急な人材派遣を依頼するための費用増加などが挙げられます。このような問題が頻発すると、企業の財務状況にも悪影響を与えかねません。
人手不足の根本的な原因
建設業における人手不足は、いくつかの原因が複合的に影響しています。特に「高齢化による労働力減少」と「若年層の建設業離れ」は、業界全体で顕著な問題として挙げられています。これらの要因を理解することで、効果的な対策を講じることが可能になります。
高齢化による労働力減少
日本全体で高齢化が進んでいる中、建設業も例外ではありません。建設業界の多くの技術者や作業員は中高年層で構成されており、彼らの退職が近づいています。しかし、その後を担う若手人材が十分に育っておらず、現場は深刻な労働力不足に直面しています。以下のグラフは、建設業の従業員年齢構成の変化を示しています。
【図表1 建設業の年齢層別就業者数の割合】 出典:総務省「労働力調査」よりヒューマンタッチ総研が作成
このグラフからもわかるように、若年層の割合は年々減少し、高齢層が大きな割合を占めるようになっています。このままでは、現場を支える若手人材が不足する一方で、熟練者が引退してしまうという二重の問題が発生するでしょう。
若手の建設業離れと業界イメージ
一方で、若年層が建設業界に参入しにくいという問題もあります。これは、労働条件や業界のイメージが主な原因です。建設業は体力的に厳しい業界であり、長時間労働が当たり前という印象が強く、若者にとって魅力的ではないとされています。実際に行われた調査では、以下のグラフのように、多くの若者が建設業に対して「厳しい労働環境」というイメージを持っていることがわかります。
建設業の人手不足を解消するための効果的な求人対策
建設業界における人手不足を解決するためには、効果的な求人対策が不可欠です。求人媒体の選び方やSNS広告を活用したアプローチなど、最新の採用手法を積極的に取り入れることが成功の鍵となります。
効果的な求人媒体の活用法
建設業界における求人成功の鍵は、ターゲットに適した求人媒体を選ぶことです。まず、一般的な求人サイトや業界専門の求人サイトを活用することで、幅広い求職者にリーチできます。例えば、大手求人サイトは多くの人に見られる一方で、業界特化型サイトは建設業に興味を持つ求職者を効率的に集めることが可能です。
さらに、媒体選びだけでなく、求人内容も重要です。求職者が関心を持ちやすいように、仕事内容や求めるスキル、福利厚生などを具体的に記載し、企業の魅力を伝えることが大切です。また、媒体ごとの特徴を理解し、例えばSNS広告や動画などのコンテンツを活用することで、求職者の目に留まりやすい求人広告を作成しましょう。
SNS広告を使ったターゲット人材へのアプローチ
SNS広告は、特に若年層をターゲットにした採用活動に有効です。FacebookやInstagram、Twitterといったプラットフォームを活用することで、建設業に興味を持っていない層にもアプローチできる点が大きなメリットです。さらに、リターゲティング機能を使って、一度求人広告を見たユーザーに再度アプローチすることも可能です。SNS広告を活用することで、20代から30代の若年層を効率よくターゲットにし、建設業界の人材不足解消に寄与します。
若手人材を採用するための具体的な採用方法
建設業界での若手人材の確保は、今後の成長において非常に重要です。効果的な採用方法を取り入れることで、若年層に対する魅力を高め、建設業への関心を引きつけることができます。ここでは、採用動画の活用やSNSマーケティングといった最新の採用手法について解説します。
採用動画を活用した魅力的な企業ブランディング
採用動画は、企業のブランディングや働く環境を視覚的に伝えるための強力なツールです。文字や写真では伝えきれない現場の雰囲気や、実際の作業内容、従業員のインタビューなどを取り入れることで、求職者にリアルなイメージを持たせることができます。特に若年層に対しては、ビジュアル的な要素が重要であり、採用動画を活用することで他社との差別化を図ることが可能です。
SNSを使った採用マーケティングの重要性
SNSを活用した採用マーケティングは、若手人材を引きつける上で非常に効果的です。InstagramやTikTokなど、若年層がよく利用するSNSを通じて、企業の日常や現場の様子を発信することで、親しみやすさと透明性をアピールすることができます。SNSでの採用マーケティングは、フォロワーとのエンゲージメントを高め、求職者が自然と企業に興味を持つきっかけを作ります。
採用サイトを活用した具体的な成功事例
採用サイトやデジタルツールを活用した建設業界における成功事例もいくつか存在します。特に、採用サイトを効果的に活用し、ターゲット層に対して魅力的な企業ブランドを構築することで、求人応募数や質を大幅に向上させた事例があります。以下にいくつかの成功事例を紹介します。
採用サイトで若手技術者を確保した成功事例(大和ハウス工業)
大和ハウス工業では、建設業界に対してネガティブなイメージを持つ若手求職者にアプローチするために、独自の採用サイトを立ち上げました。このサイトでは、ただ求人情報を掲載するだけでなく、若手社員のインタビューや、会社の働きやすさ、研修制度、福利厚生の充実を動画や写真を交えて紹介しました。
具体的な取り組み
- 若手社員のストーリーを発信:自社で働く若手技術者のキャリアパスや実際の働き方を紹介することで、同じ世代の求職者が共感しやすいコンテンツを作成。
- 採用動画の導入:動画を通じて、実際の現場や従業員の様子をリアルに伝え、建設業の仕事に対する現実的なイメージを提供。
- 応募者向けのQ&Aセクション:求職者が抱きやすい疑問に先んじて回答することで、応募前の不安を解消し、応募率を向上させました。
成果
- 応募者数の増加:採用サイトをリニューアルしてから、特に20代の若手求職者からの応募数が前年比20%増加。
- 応募者の質の向上:具体的な仕事内容やキャリアパスの情報を提供した結果、ミスマッチが減少し、採用後の定着率も向上。
デジタルマーケティングを駆使した採用成功事例(竹中工務店)
竹中工務店は、デジタルマーケティングを活用し、SNS広告と連動した採用サイトを構築しました。ターゲット層を明確にした上で、FacebookやInstagramを通じて魅力的な広告を配信し、採用サイトへの流入を増加させる戦略を展開しました。採用サイトでは、エンジニアや技術者のインタビュー動画、キャリアアップの具体例などを豊富に提供しました。
具体的な取り組み
- SNS広告との連動:FacebookやInstagramで「現場体験」「キャリアパス」を強調した広告を配信し、採用サイトへのアクセスを誘導。
- レスポンシブデザインの採用サイト:スマートフォンでも使いやすいデザインにし、移動中でも簡単に求人情報を確認できるように工夫。
- キャリアシミュレーター:求職者が自分のキャリアパスを具体的にシミュレーションできるツールを提供し、実際の働き方をイメージしやすくした。
成果
- 採用サイト経由の応募数が前年比25%増加し、特にSNS広告からの流入が大きな要因。
- 新卒採用の定着率向上:応募者がキャリアのビジョンを明確に持って入社するため、早期離職率が大幅に低下。
採用サイトとMEO対策を活用した地域密着型採用(地方建設会社)
ある地方の建設会社では、地域での知名度を上げ、地元で働きたい若手求職者をターゲットにした採用サイトを展開しました。地域名を活用したMEO(マップエンジン最適化)対策を取り入れることで、地元で働きたい求職者に効率的にアプローチしました。
具体的な取り組み
- 地域密着型のコンテンツ:地域名を含むキーワードを活用し、地元に根付いた企業文化や、地域貢献活動をアピールすることで、地元で働きたい求職者に訴求。
- Googleマイビジネスとの連動:地元の建設現場の実績や取り組みを掲載し、求職者が簡単にアクセスできる情報を提供。
- 採用イベントの告知:採用サイトで地域の採用イベントを告知し、地元の求職者を集める施策を実施。
成果
- 採用サイトを通じた地元求職者の応募数が前年比30%増加し、特に新卒求職者からの応募が大幅に増加。
- 採用イベントの参加者も増加し、採用に直接つながったケースが多発。
2025年問題に備えた建設業の採用戦略
2025年に向け、建設業界ではさらに大きな変革期を迎えます。いわゆる「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳を超えることに伴い、急速に労働人口が減少するという問題です。これにより、特に労働集約型の産業である建設業は大きな影響を受けることが予想されています。ここでは、2025年問題に備えた採用戦略について解説します。
2025年問題とは?
2025年問題は、日本全体における労働力の減少と高齢化の問題を象徴するものです。特に建設業では、現場を支える熟練技術者の引退が進み、新たな人材の育成が急務となっています。団塊の世代が一斉に75歳を超えることで、労働力の大幅な減少が避けられません。また、若手人材の不足も深刻で、業界全体として新しい雇用形態や技術の導入が必要です。
長期的な人材確保のための戦略的アプローチ
2025年問題に備えるためには、短期的な求人対策だけでなく、長期的な視点での人材確保戦略が重要です。例えば、新しい雇用形態の導入や、外国人労働者の採用が有効な手段となるでしょう。また、働き方改革を進めることで、若手の離職率を低下させ、定着率を高めることが期待されます。具体的には、フレキシブルな勤務時間の導入やリモートワークの活用、技能のデジタル化による業務効率化が考えられます。これにより、労働力の減少に対応しながら、現場の効率化を図ることができるでしょう。
建設業における効率化と離職率低下のための取り組み
建設業界では、人手不足に加え、労働環境の厳しさから離職率の高さも問題となっています。これらの課題に対応するためには、効率化を進めるとともに、働きやすい環境を整えることが不可欠です。ここでは、効率化と離職率低下に向けた具体的な取り組みについて解説します。
働き方改革と建設業の業務効率化
建設業においても、働き方改革を進めることで業務効率化を図ることができます。従来の労働集約的な働き方を見直し、テクノロジーを活用した新しい業務フローを取り入れることが効果的です。例えば、現場でのICT(情報通信技術)の導入や、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用が挙げられます。これらの技術を活用することで、作業の可視化や進捗管理が容易になり、無駄な時間や労力を削減することが可能です。ICTの導入により、紙ベースで行われていた作業がデジタル化され、データの共有や分析も迅速に行えるようになります。また、BIMを活用することで、建設プロジェクト全体の計画と実行が効率的に進み、従来の方法に比べて大幅に効率化を図ることができます。これにより、少ない人手でも効率よく作業を進めることができるようになります。
離職率低下に向けた労働環境の改善
効率化とともに、従業員が安心して働ける環境を整えることも重要です。離職率が高い原因の一つとして、過酷な労働環境や長時間労働が挙げられます。これを改善するためには、福利厚生の充実やワークライフバランスの確保が必要です。
例えば、健康管理制度の導入や、有給休暇の取得促進、家族との時間を大切にできるフレキシブルな勤務時間制度が効果的です。これにより、従業員の満足度が向上し、定着率を高めることが期待されます。さらに、現場での安全対策を強化し、従業員が安心して作業に従事できるようにすることも重要な要素です。労働環境の改善に成功した企業では、離職率が大幅に減少し、従業員の士気が向上しています。
まとめ
この記事では、建設業における人手不足の解消に向けた具体的な解決策を紹介しました。まず、効果的な求人媒体やSNS広告を活用した求人対策が重要です。また、採用動画やSNSマーケティングを通じて、若手人材へのアプローチも効果的です。さらに、2025年問題に備えた長期的な人材確保戦略や、ICT導入による業務効率化、働きやすい労働環境の整備が成功の鍵となります。採用サイトやデジタルツールの活用事例も参考に、効果的な施策を実施しましょう。
著者情報
田中 稔也
Kuroko Works 株式会社 経営コンサルタント保有資格:ウェブ解析士
福岡県大牟田市出身。
2010年、管理栄養士という資格から健康食に特化した配食事業を立ち上げ、みのりや柳川店・大牟田店の2拠点を運営。その後、「株式会社メディカルフーズみのりや」として法人化する。
集客やマーケティング、資金調達、求人戦略、人材育成など、多様な角度から組織運営を鑑み、事業への最適化を実施してきた結果、3期目で年商1億円越えを達成。
経営者同士のつながりの中で、中小企業経営者の悩みを多く聞く機会があり、自身の経験をもとに解決していけるコンサルティングを提供したいと考えるようになる。
2023年、株式会社メディカルフーズみのりやをM&Aにて事業譲渡し、Kuroko Works株式会社を設立。
福岡県(福岡・久留米)、佐賀県、熊本県をメインにコンサルティングサービスを提供、現在に至る。
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